1. 医薬品医療機器等法の広告規制 医薬品医療機器等法(薬機法、旧薬事法)は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保などのために必要な規制を行うこと等を目的とした法律です。医薬品等の広告が適正でない場合、保健衛生に悪影響を与えるおそれがあることから、医薬品医療機器等法は、医薬品等の効能、効果、性能等に関する虚偽・誇大広告や、承認前の医薬品等の名称、効能、効果、性能等に関する広告等を規制しています。このような広告規制に違反した場合は、これまでも刑事告発や行政処分等の対象になってきました。しかし、事業者等が虚偽・誇大広告を行って、莫大な利益を得ていたとしても、改正前の医薬品医療機器等法では、それに見合うような罰金を科すことができず、違反行為による経済的利得が事業者の手元に残ってしまうという問題がありました。また、医薬品医療機器等法上の業の許可を得ていない事業者が虚偽・誇大広告を行った場合に、許可の取消や業務停止命令といった行政処分を行うことができないという点も問題となっていました。2. 医薬品医療機器等法の課徴金制度の仕組み 以上の問題を踏まえて医薬品医療機器等法が改正され、2021年8月1日から課徴金制度が導入されています。医薬品医療機器等法の課徴金制度は、厚生労働大臣が、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽・誇大広告をした製造販売業者、卸売販売業者、販売業者等に対し、原則として、その広告の開始から終了後6か月までの期間(最長3年間)に取引をした虚偽・誇大広告の対象医薬品等の売上額の4.5%を課徴金として納付することを命令するものです。したがって、事業者は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の広告をする場合には、医薬品医療機器等法、不当景品類及び不当表示防止法(景表法)等に違反することがないよう、広告の表現に問題がないかを丁寧に確認する必要があります。3. 虚偽・誇大広告の通報窓口 一般市民の立場からすれば、医薬品医療機器等法違反の虚偽・誇大広告を野放しに許している状態は、健康被害等の発生に繋がる危険な状態であると言えます。医薬品医療機器等法違反の虚偽・誇大広告の通報窓口がありますので、もし、医薬品医療機器等法違反の疑いがあるインターネットサイトを見つけた場合には、是非、通報することをご検討ください。4. 広告を見る側の目が試されていること このコラムを執筆する過程で、虚偽・誇大広告規制の対象となる者と課徴金制度の対象となる者の範囲が同一であるかのように解説しているコンサルティング業者のホームページを見つけました。しかし、医薬品医療機器等法を所管する厚生労働省はそのような解釈は取っていません(同省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課「課徴金納付命令に係る対価合計額の算定の方法に関するQ&Aについて」)。事業者向けに、行政解釈と異なる解説をするこの業者のホームページ自体が、法規制について誤認を生じさせて顧客を誘引しようとする不当な広告であると言えそうです。一般消費者向けの広告にしろ、事業者向けの広告にしろ、広告を見る側の目が常に試されているのでしょう。2022年1月16日