1. 成年後見とは 交通事故で頭部外傷を負ったことにより、脳に重い後遺障害が残って判断能力を失った被害者が、加害者に損害賠償請求をするにはどうしたら良いでしょうか?認知症のために判断をすることができなくなってしまった方が、老人ホームの入所契約を締結したり、財産の管理をしたりするにはどうしたら良いでしょうか?成年後見とは、このような精神障害、知的障害、認知症などによって判断能力が欠けてしまった方のために、家庭裁判所が、「後見開始の審判」をし、ご本人を援助・支援する成年後見人を選任するための制度です。2. 誰が成年後見人に選任されるのか ご家族等から申立てを受けた家庭裁判所は、申立書に記載された事情を見て、誰を成年後見人に選任するかを判断します。申立書に記載された候補者が適任である場合には、その候補者が選任されます。しかし、本人の財産が多かったり、親族間で紛争が発生していたりする場合には、弁護士や司法書士などの専門職後見人が選任されることがあります。また、主に福祉面での支援が必要な方については、社会福祉士などの専門職後見人が選任されることがあります。3. 成年後見人の役割等 成年後見人は、後見開始の審判を受けた本人(成年被後見人)の財産を管理する権限を持っており、本人に代わって契約を締結したり、本人が誤って締結した契約を取り消したりすることができます。本コラム冒頭の交通事故被害者の場合、成年後見人は、脳に後遺障害が残って判断能力を失ってしまった被害者本人に代わって、加害者(又は保険会社)に対して損害賠償請求をします。成年後見人は、本人の意思を尊重し、かつ、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人の財産全体をきちんと管理していかなければなりません。(もっとも、病気等の状態によっては、ご本人の意思が全く分からないため、成年後見人としてどのように判断すべきかを迷うことがあります。)成年後見人は、その事務の内容に応じて、家庭裁判所が決定する額の報酬を本人の財産の中から受け取ることができます。4. 成年保佐・成年補助 判断能力が欠けている(=後見相当)とまでは言えないけれども、判断能力が十分とも言えず、援助・支援を必要とする方もいます。判断能力が著しく不十分な方については、成年保佐人を選任する「保佐」という制度があります。判断能力が不十分な方については、成年補助人を選任する「補助」という制度があります。例えば、成年後見人は、財産に関する全ての行為についての代理権を有しています。これに対し、成年保佐人は、特定の法律行為について家庭裁判所が審判で定めた場合にしか代理権を持ちません。5. 任意後見 「後見」、「保佐」及び「補助」は、法定後見制度と呼ばれる制度で、家庭裁判所が成年後見人等を選任します。これに対し、本人が、将来に備えて、予め公正証書で契約を結んでおき、判断能力が不十分になったときに、その契約に基づいて、自分が選んだ人(「任意後見人」といいます。)に援助・支援してもらう任意後見という制度もあります。2022年2月23日