1. 不動産賃貸のリスク 不動産賃貸(アパート経営など)には、様々なリスクが伴います。空室リスク、賃料滞納リスク、入居者トラブルリスク、修繕リスク、災害リスクなどです。2. 連帯保証の有用性 不動産の賃貸人が負っている賃料滞納リスク及び一部の入居者トラブルリスクへの備えとして、賃借人に連帯保証人を立ててもらうという対策が広く行われています。適法に連帯保証契約が締結されていれば、家賃の滞納があったり、賃借人が通常の住み方、使い方をしていても発生する損傷や痛み(これを「通常損耗」といいます。)の範囲を超えて部屋が汚損されたりしても、通常、賃貸人は、連帯保証人に、滞納家賃や修繕費用を請求することができます。3. 個人保証人保護の必要性 しかしながら、親戚がアパートを借りる際に、「絶対に迷惑を掛けないから、名前を貸して欲しい」などと頼まれて連帯保証をした人が、後に、賃貸人から、想定外に多額の請求を受けてしまうという事例が少なくありませんでした。賃借人が長期間家賃を滞納したり、賃借人が部屋を著しく汚損したまま退去したり、賃借人の落ち度で建物が焼失してしまったりした場合などです。そこで、2020年4月1日施行の「民法の一部を改正する法律」(いわゆる「債権法改正」)において、保証制度の見直しが行われました。これまでは、個人の保証人が支払責任を負う金額の上限(「極度額」といいます。)を定める必要があったのは、将来発生する不特定の債務を個人が保証する契約(「個人根保証契約」といいます。)のうち、貸金等債務に関するものだけでした。しかし、債権法改正後は、全ての個人根保証契約において、極度額を定めなくてはならなくなりました。この改正により、例えば、賃借人が長期間賃料を滞納したり、賃借人が建物を損壊して修理費用が高額になったりしても、個人保証人は、契約書に定められた極度額の範囲で支払いをすれば良いことになりました。2020年4月1日以降は、全ての個人根保証契約につき、書面に極度額を定めていなければ、保証自体が無効になります。(2020年3月31日以前に保証契約が締結されている場合には、改正前の法律が適用されます。)不動産の賃貸人が、2020年4月1日以降も、以前の契約書式をそのまま使って連帯保証契約を締結しているという場合は、至急、対策を講じる必要があります。4. 特別の事情による保証の終了 また、貸金等債務以外の根保証契約について、主債務者の死亡、保証人の破産や死亡などの事情が生じた場合は、保証が終了するという改正も行われました。この改正により、例えば、アパートの賃借人が死亡した後も賃借人の子などがそのアパートに住み続けている場合において、子が賃料を支払わなかったとき、個人保証人は、賃借人が死亡した時点までの未払賃料等を支払えば良いことになりました。賃借人が死亡した後も同居の子などがその不動産に住み続ける場合や、連帯保証人が死亡した場合、不動産の賃貸人としては、代わりの連帯保証人を立ててもらうなどの対策をとれるかを検討した方が良いでしょう。2022年2月24日