1. 成年年齢の引下げ 日本では、1876(明治9)年に当時の太政官布告という法令により定められてから140年以上の間、成年年齢は20歳と定められてきました。しかし、民法の改正に伴い、2022(令和4)年4月1日から、成年年齢は18歳に引き下げられます。2002年4月1日までに生まれた方は、20歳の誕生日に成年になります。2002年4月2日から2004年4月1日までに生まれた方は、2022年4月1日に一斉に成年になります。2004年4月2日以降生まれた方は、18歳の誕生日に成年になります。2. 成年に達することのメリットとデメリット (1) メリット 成年に達すると、親の同意無しに、自分で様々な契約をすることができるようになります。また、親の親権に服さなくなります。例えば、部屋を借りる、クレジットカードをつくる、お金を借りる、携帯電話の契約をするといったことができます。自分の住む場所、進学や就職などの進路なども自分の意思で決定できるようになります。法務省HP「民法(成年年齢関係)改正 Q&A」は、この改正について、「成年年齢を18歳に引き下げることは、18歳、19歳の若者の自己決定権を尊重するものであり、その積極的な社会参加を促すことになると考えられます。」と謳っています。成年年齢引き下げは、良いことだらけのように見えます。(2) デメリット ~ 18歳及び19歳の未成年者取消権がなくなること しかし、成年年齢の引下げは、多くの若者に深刻な経済的被害をもたらすことになるのではないかと懸念されています。民法は、未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、原則として、契約を取り消すことができるとしています(これを「未成年者取消権」といいます。)。国民生活センターのHP「18歳から"大人" 18歳・19歳に気を付けてほしい消費者トラブル 最新10選」によれば、2017年度~2020年度に全国の消費生活センター等に寄せられた20歳代前半の相談件数は、未成年者に比べて多いそうです。(この期間中における契約当事者が20歳~24歳の相談件数の平均値は、18歳及び19歳の相談件数の平均値の約1.71倍になります。)また、20歳代前半の相談の方が契約金額も高額になっているそうです。このようなデータから、未成年者取消権が、未成年者の消費者被害を抑止する役割を果たしていることが分かります。しかし、2022年4月1日から、18歳及び19歳の若者は、未成年者取消権の保護の対象から外れてしまいます。3. 消費者トラブルにご注意を! (1) 消費者被害をもたらす商法・商売の例 成年年齢引下げにより、18歳から、消費者トラブルのターゲットにされやすくなります。また、18歳以上の方がした契約は、未成年という理由だけで取り消すこともできなくなります。18歳及び19歳の方、これから18歳になる方は、次のような消費者被害をもたらす商法・商売に、特に気を付けるようにしてください。情報商材、マルチ商法(ネットワークビジネス)、投資(暗号資産、FX、バイナリーオプション取引等)、転売ビジネス、副業、内職等の儲け話(確実・簡単に儲けられるといった話を信用してはいけません。本当に確実・簡単に儲けられるのであれば、そのことを人に勧めたり、教えたりすることなく、儲けを独り占めするはずです。)化粧品、健康食品、嗜好品等の高額商品の購入(商品代金を信販会社が立替払いし、後で信販会社に返済をしていくクレジット契約を伴うことが多いです。)や定期購入エステ、美容整形、タレント・モデル向けレッスン、語学学校、資格講座等の高額サービス(クレジット契約を伴うことが多いです。)消費者金融等からの借入れ(他人のために自分の名義で借り入れる「名義貸し」は特に危険なので、絶対にやめてください。)クレジットカードのローン(借入れ)、使い過ぎ、リボ払いの利用(リボ払いの危険性については、別コラム「債務(借金等)の問題で困ったときに」にて具体的な説明をしていますので、ご覧ください。)(2) 勧誘の手口 消費者被害をもたらす商法・商売の勧誘の手口は様々で、例えば、以下のような方法があります。大人が直接勧誘する方法友人や先輩を介して勧誘する方法(友人や先輩自身も騙されていることが多いです。大学のサークルメンバー全員が被害に遭うといった事例もあります。)SNS上で親身になって相談に乗るふりをして信用させてから勧誘する方法若者の夢やあこがれにつけ込むような甘言で勧誘する方法販売員であることを隠した異性が何度かデートをし、恋人関係であるかのように錯覚させてから勧誘する方法複数名で長時間に渡って説得し、契約するまで帰れないような雰囲気を作り上げて勧誘する方法消費者トラブルを未然に防ぐためにも、勧誘の具体的な手口は知っておいた方が良いです。国民生活センターHP「若者の消費者トラブル」、「身近な消費者トラブルQ&A」などに様々な事例が紹介されていますので、是非一度ご覧になってください。(3) 対策 消費者トラブルになりやすい商法・商売、勧誘の手口を予め知っておくだけで、消費者トラブルに遭う確率を下げることができます。その上で、少しでもおかしいと感じたら、その場の勢いで契約をしないようにしてください。相手方が契約を急がせるようであれば、怪しい取引である可能性を疑ってください。契約したり、お金を支払ったり、お金を借りたりする前に、是非、親や周囲の年長者に相談してください(現実社会で昔から面識があって、今後も付き合いが続くような人に相談するのが良いでしょう。)。全国各地にある消費生活相談窓口(相談無料。国民生活センターHP「全国の消費生活センター等」にて検索するか、消費者ホットライン188番〔全国共通の電話番号、局番なし〕に電話して案内してもらってください。)や弁護士に相談してみるというのも良い考えです。契約してしまった後でも、お金を支払ったり、お金を借りたりする前であれば何とかなることが多いと思いますので、まずは相談をしてみることが大切です。個人差はありますが、20歳前後の若者は未熟なことが多いです。私自身の20歳前後の頃を思い返してみると、用心して人付き合いをするということは全く考えていなかったので、私は、親などに相談することなく、簡単に騙されてしまうような若者だったと思います。相談することは、決して恥ずかしいことではありません。4. 成年年齢引下げ後も変わらないこと 成年年齢が18歳になっても、健康面への影響や非行防止、青少年保護、ギャンブル依存症対策等の観点から、飲酒や喫煙、競馬や競輪などの公営競技に関する年齢制限はこれまでの20歳のままです。養子を迎えることや、大型・中型自動車免許を取得することも、20歳にならないとできません。2022年3月16日