前のコラム「自動車保険のお勧めの特約(1) ~ 他車運転特約」に引き続き、加害者になってしまった場合に役に立つ任意自動車保険(共済)の特約について説明したいと思います。このコラムの前提も、前のコラムの冒頭部分に記載したとおりです。損害保険会社及び共済組合9社(組合)をそれぞれA社~I社と呼んで、各社の2022年6月時点における個人向け任意自動車保険(共済)の約款の内容を説明しています。2. 対物超過修理費用特約 対物超過修理費用特約は、お勧めの特約の一つで、事故の相手方が不満を持ちやすい費用を一定程度カバーすることで、紛争の早期円満解決に役立ってくれます。(対物全損時修理差額費用補償特約などと呼ぶ会社もあります。)(1) 特約の意義 対物超過修理費用特約は、対物賠償責任保険金を支払う事故において、相手方自動車の実際の修理費用が時価額を超えたときに、その超過分の修理費用に過失割合を乗じた額を保険金として支払うことを内容とする特約です。支払限度額は、9社全部50万円です。A~C、E、G~Iの7社は6か月以内に修理することを条件とし、D社は1年以内に修理することを条件としています。(2) 特約の有用性 この対物超過修理費用特約は、相手方自動車の年式が古くて、時価額が低い場合に役立ちます。相手方の過失割合がゼロか低いときは、特に有用です。例えば、赤信号で停止していた相手方自動車に追突し、相手方自動車の修理費用が40万円だったとしましょう。しかし、相手方自動車は、初年度登録から10年以上経過していて、時価額が25万円しかありませんでした。この場合、加害者が法律上の対物賠償責任を負う額は、基本的に、相手方自動車の時価額に当たる25万円です。修理するには15万円足りません。追突された相手方としては、自分は一切悪くないのに、自分で15万円を追加して支払わないと自動車を修理することができないため、困ってしまいます。加害者としても、相手方は一切悪くないのに、相手方自動車を乗れない状態にしてしまっているので、とても後味の悪い思いをします。対物超過修理費用特約があると、保険会社は、このような場合に、相手方が実際に自動車を修理するにあたって、加害者が対物賠償責任を負う25万円に、15万円の超過修理費用分も加えて、合計40万円を保険金として支払ってくれます。(3) 特約のセット 今回、2022年6月時点の約款を確認した9社のうち8社は、基本的に、対物超過修理費用特約を自動的に附帯する(又は基本契約に含める)扱いにしています。なお、I社は、約款上は任意セットの特約にしか見えないのですが、I社のホームページやパンフレットには自動セットと記載されています。9社のうちH社だけが、対物超過修理費用特約を任意セットの特約としています。試しにH社のホームページで見積りをしてみたところ、特約保険料は、1台年額数百円~千数百円のようです。(年齢などの条件で細かく変わります。)次のコラム「自動車保険のお勧めの特約(3) ~ 人身傷害保険」に続きます。2022年6月28日