1. 交通事故発生時の対応 ~ 加害者になってしまった場合 自賠責保険(共済)と任意自動車保険(共済)に加入し、かつ、適切な特約を付けることで、交通事故が発生して加害者となってしまう場合に備えることができます。(別コラム「自動車保険 ~ 交通事故の加害者になる場合への備え」、「自動車保険のお勧めの特約(1) ~ 他車運転特約」等をご参照ください。)では、実際に交通事故が発生し、加害者になってしまった場合、何をする必要があるのでしょうか。(1) 道路交通法上の義務 交通事故が発生したときは、直ちに運転を止め、安全を確保した上で負傷者を救護してください。(状況に応じて、応急手当を行う、救急車を要請する、最寄りの病院に連れて行くなどをしてください。)また、二次災害等が起きないように、道路における危険を防止する措置を講じてください。(事故車の移動、ハザードランプの点滅、停止表示板・発煙筒の設置などを行ってください。)その上で、速やかに、交通事故があったことを警察官に報告してください。これらは、道路交通法上の義務であり、違反した場合には刑事罰や行政処分を受けることがあります。(別コラム「交通事故発生時の加害者の3つの責任」をご参照ください。)(2) 保険会社への連絡 任意自動車保険(対人・対物賠償責任保険)に加入している場合、速やかに、保険会社に対して交通事故を起こしてしまったことを報告してください。任意自動車保険に加入している場合、基本的には、保険会社が被害者との示談交渉や損害賠償金の支払をすることになるので、自分で示談交渉等をしないでください。過失割合(過失相殺率)が確定していないのに、被害者に対して「全て賠償します。」などと言ってしまうと、被害者に誤解を与えることになってしまいますので、気を付けてください。(3) 被害者への対応 ① 交通事故直後の謝罪 交通事故直後は、自分の損害額が幾らになるのか、相手方の損害額が幾らになるのか、過失割合がどうなるかといったことは分からない段階です。しかし、自分の過失の方が相手方の過失よりも大きいと考えられる状況であれば、誠意をもって謝罪するようにしてください。交通事故直後に加害者がきちんと謝罪していなかったことが、後々に、被害者に大きな不満を残す要因になっていることが多くあります。② 保険会社の対応の確認 任意自動車保険に加入していると、自分の保険会社の担当者が適切に交通事故を処理し、相手方(被害者)に誠実に対応してくれていると考えてしまいがちです。しかしながら、保険金の支払総額を下げることを目的として、保険会社の担当者が、被害者の通院を不当に制限してきたり、被害者に対して不誠実な提示をしてきたりする場合があります。そのような場合でなくとも、保険会社の担当者は、忙しすぎるためか、言葉遣いが雑な方が一定数いるため、保険会社の担当者とのやり取りにストレスを感じる被害者は多いです。ですから、相手方(被害者)の怪我が軽いとは言えないような場合であれば、被害者にお見舞いをする際に、保険会社の担当者が被害者に誠実に対応しているかをそれとなく確認していただいた方が良いかもしれません。もし、自分の保険会社の担当者が、被害者対応を誠実に行っていない可能性があるのであれば、保険会社の担当者に苦情を言ったり、相手方(被害者)に対して弁護士に事件処理を依頼することを勧めたりしても良いように思います。(4) 自分や同乗者の怪我等への対応 ① 人身傷害保険の確認 加害者側で自分や同乗者が怪我等をした場合には、人身傷害保険を使えるかを確認してください。人身傷害保険は、過失割合にかかわらず、交通事故で死傷した人に保険金を支払ってくれる保険です。自分(加害者)の過失が大きくても、自分(加害者)の過失分の人身損害(人的損害)を補償してくれます。加害者側で自分や同乗者が怪我等をした場合に、人身傷害保険を使うことができると、自分の保険会社が当面の治療費、休業損害等を支払ってくれるため、金銭面の心配をする必要がなくなります。交通事故を起こしてしまった自動車に人身傷害保険が付いていない場合(又は、人身傷害保険への加入はあるけれども、保険金額が十分でない場合)は、運転者やその同居親族(未婚者であれば別居の親も含みます。)の自動車に人身傷害保険が付いていないかも確認した方が良いでしょう。他の自動車の人身傷害保険を使う場合は、その人身傷害保険の保険会社にも交通事故発生の報告をしてください。② 人身傷害保険金の支払額を提示された時の注意点 自分や同乗者の治療等が全て終了した後に、保険会社は、人身傷害保険金の最終支払額を提示してきます。このときは(特に後遺障害事案の場合は)、保険会社から提示された人身傷害保険金の額が適切かどうか確認するため、弁護士の法律相談を受けることをお勧めします。詳細は、別コラム「自動車保険のお勧めの特約(3) ~ 人身傷害保険」の3.(6)の説明をご覧ください。次のコラム「交通事故発生時の対応(2) ~ 被害者編」に続きます。2022年8月30日