1. 最低賃金の意義 賃金は、原則として、労働者(従業員)と使用者(企業等)の間の契約(合意)によって自由に決めることができます。しかし、労使間の完全に自由な合意に委ねてしまうと、不況で就職しにくい時には、労働者が生活を維持することができなくなってしまうほどに賃金が低くなるということが起きかねません。そこで、最低賃金法は、労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定、労働力の質的向上、事業の公正な競争の確保及び国民経済の健全な発展を目的として、最低賃金額を時間によって定めることにしました。2. 最低賃金の引上げ 最低賃金の決定方式は、地域別最低賃金と特定最低賃金(産業別最低賃金)の2種類あります。(1) 沖縄県地域別最低賃金 地域別最低賃金は、都道府県別に最低賃金が定めるものです。沖縄労働局長は、2022年9月6日、2022(令和4)年度の沖縄県最低賃金を時間額853円に改正しました。改正額は2022年10月6日(木)から発効しています。2021(令和3)年度の最低賃金の時間額820円から33円の引き上げになります。(2) 沖縄県産業別最低賃金 産業別最低賃金は、特定の産業に関する最低賃金で、沖縄県では新聞業についてのみ定められています。新聞業の現行の最低賃金は時間額853円ですが、沖縄労働局長は、2022年10月18日、2022(令和4)年度の沖縄県新聞業最低賃金を時間額879円に改正しました。改正額は2022年11月17日(木)から発効します。3. 最低賃金の適用 (1) 適用対象 最低賃金は、雇用形態(パート、アルバイト、派遣、日雇い等)や国籍を問わず、全ての労働者に適用されます。ただし、労働局長の許可を受けた場合は、精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者、軽易な業務に従事する者等に対する賃金を最低賃金額から減額することができるとの特例があります(最低賃金法第7条)。(2) 計算例 改正後の沖縄県の地域別最低賃金は、時間額853円です。日給制であれば、例えば、1日の所定労働時間が8時間の場合、日給は6824円以上である必要があります。アルバイトや日雇いでも同様です。月給制であれば、例えば、1か月の所定労働時間が168時間(1日8時間×21日)の場合、月給は14万3304円以上である必要があります。月によって所定労働時間数が異なる場合は、月給を1年間における月平均所定労働時間数で除した金額が最低賃金以上である必要があります(最低賃金法施行規則第2条第3号)。最低賃金以上かどうかを計算する際に、賞与、一時金、時間外・休日・深夜割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当等は算入しません。そのため、使用者は、例えば、「月給の額面は最低賃金を下回っているように見えるかもしれないが、賞与を年2回支払っているので、最低賃金を下回ることはない」と主張することができません。4. 最低賃金に満たない場合 もし、あなたが労働者として、最低賃金を下回る水準の賃金しか支払ってもらえないのであれば、直ちに労働基準監督署に相談してください。もし、あなたが使用者の場合は、賃金額が最低賃金を下回ることがないかどうかをきちんと確認し、下回るようであれば基本給を引き上げてください。最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合、使用者は、最低賃金額との差額を労働者に対して支払わなくてはなりません。地域別最低賃金額以上の賃金額を支払っていない場合には、50万円以下の罰金に処されることがあります(最低賃金法第41条第1号)。なお、使用者は、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げ、設備投資などの業務改善を行った場合などにおいて、助成金等の支援を受けることができます(厚生労働省沖縄労働局発表「中小企業・小規模事業者に対する最低賃金引上等の環境整備のための支援策パッケージを作成しました。」、厚生労働省HP「最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業」などをご参照ください。)。2022年9月12日(2022年10月25日一部訂正)