1. 戸籍改製の経緯 戸籍法の改正に伴う戸籍の改製により、戸籍には複数の様式があります。様式変更前の古い戸籍のことを改製原戸籍(かいせいげんこせき・かいせいはらこせき)と呼び、家・家族全体のものを改製原戸籍謄本、個人に限ったものを改製原戸籍抄本と呼びます。(1) 昭和改製原戸籍 古い戸籍には、旧民法の規定に基づく家制度を前提として、戸主とその親族によって構成される様式のものがあります。この戸籍には、親子孫の三代を記載することができました。通常は手書きのため、読みにくいです。このような戸籍は、昭和32年法務省令第27号(ただし、沖縄は、琉球政府時代の「戸籍法第百二十二条第一項の戸籍の改製に関する規則」(1965年規則第94号))によって改製されていることから、一般的に、昭和改製原戸籍と呼ばれます。手元にある旧美里村(現在の沖縄市の一部)の戸籍は、1967(昭和42)年に改製され、旧勝連村(現在のうるま市の一部)の戸籍は、本土復帰直前の1971(昭和46)年に改製されています。(2) 平成改製原戸籍 昭和の改製後の戸籍は、家族制度を前提として、筆頭者、配偶者とその未婚の子によって構成される様式に変更されました。この戸籍は、平成6年法務省令第51号によって改製されたものであることから、一般的に、平成改製原戸籍と呼ばれています。手元にある沖縄市の戸籍は2001(平成13)年に改製され、うるま市の戸籍は4市町合併の翌年2006(平成18)年に改製されています。(3) 現在の戸籍 平成の改製後の戸籍は、コンピューター化されて電磁的に管理されています。様式は、縦書きから横書きになりました。名称は、戸籍謄本が戸籍全部事項証明書に、戸籍謄本が戸籍個人事項証明書に、除籍謄本が除籍全部事項証明書にそれぞれ変更されています。2. 戸籍収集の手間 人が亡くなり、その相続手続きを進める際には、亡くなった方(被相続人)の相続人に当たる人が誰か確定させるため、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍等を揃える必要があります。上記1.の経緯から、平成の前半頃よりも前に生まれた人の出生から死亡までの戸籍を揃えるとなると、戸籍証明書等が少なくとも3通必要になるなど、これまでは、戸籍を集めるのにとても手間が掛かりました。例えば、2022年に行ったある相続手続きでは、4人家族の母親が死亡した際に、4つの自治体から計7通の戸籍証明書等を取り寄せなければなりませんでした。この相続手続きは比較的単純な事例であり、相続人が多かったり、被相続人が転籍を繰り返したりしている場合には、戸籍を集めるのに、当然より多くの手間が掛かっていました。3. 広域交付制度の導入 戸籍法の改正により、2024年3月1日から、戸籍証明書等の広域交付制度が導入されました。現在は、最寄りの市区町村(本籍地以外でもOKです。)の窓口で、まとめて、戸籍証明書・除籍証明書を請求できます。ただし、一部事項証明書、個人事項証明書、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は請求できません。この制度で請求できるのは、本人、配偶者、父母や祖父母(直系尊属)、子や孫(直系卑属)の戸籍証明書等です。きょうだいの戸籍証明書等を取得することはできません。広域交付制度で戸籍証明書等を請求する際には、直接市区町村の窓口に行き、顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)を提示する必要があります。代理人や郵送による請求はできません。この広域交付制度は、一般の方の利便性を向上させるものです。ただし、相続手続きを進めるために必要な全ての戸籍等が必ず揃うわけではないので注意が必要です。また、戸籍法第10条の2第3項に基づく弁護士等の士業による職務上請求が広域交付制度の対象外になっているため、この点は早急に改善してほしいと考えています。2024年3月29日